動産譲渡担保の誕生の背景

動産譲渡担保の誕生の背景

近年、バブル経済の崩壊により景気が低迷し、長期デフレが進行する中で、右肩上がりだった不動産価格が著しく下落し、担保不動産の担保力不足や担保割れを生じる事態が起こりました。

こうした状況の中、不動産担保に過度に依存する資金調達システムの危険性が指摘され、企業が不動産担保や個人保証による金融機関からの借入れのほか、複数の資金調達手段を持つことの必要性や企業金融の多様化の必要性が多く指摘されるようになりました。

こうした中、これまで担保として活用されていなかった動産や売掛債権を活用した資金調達方法が注目されるようになっています。企業が有する売掛債権や動産は、土地を凌ぐほどの資産規模があり、これらを活用して資金調達をすることができれば、企業の資金調達力が大幅に増大することが期待されています。

ABL(Asset Based Lending)とは

企業が保有する在庫や売掛債権を金融機関へ担保提供などをすることで資金調達をする手法のこと。ABLはユーザーにとっては、事業資産の有効活用、資金調達方法の多様化、安定した運転資金の確保、事業拡大に伴う成長資金の確保などの効果が期待できるほか、金融機関にとってもバランスシートだけでは見えなかった実際の企業力を把握できることにより、企業査定能力の向上、新たな顧客の開拓などにつながる効果が期待されます。

債権・動産譲渡に係る登記制度

債権譲渡登記制度は、法人が金銭債権を譲渡した場合や金銭債権を目的とする質権の設定をした場合に、債権譲渡登記をすることによって、債務者以外の第三者に対する対抗要件を具備することができる制度です。

債権譲渡登記の対象は、法人がする金銭債権の譲渡および金銭債権を目的とする質権の設定に限定されています。

債務者が特定していない債権の譲渡についても、債権譲渡登記が可能となったため、例えば、不動産賃貸業者が建物に将来入居する賃借人に対して有する賃料債権や、物品販売業者が在庫商品を将来販売したときに取得する売買代金債権などについても登記することが出来るようになりました。

債権譲渡登記がされたときは、債務者以外の第三者との関係では、民法467条の規定による確定日付ある証書による通知があったものとみなされます(動産債権譲渡特4(1))。

債務者との関係では、譲渡人または譲受人が債務者に登記事項証明書を交付して通知をしたときに、対抗要件が具備されることになる(動産債権譲渡特4(2))ため、債務者は、この通知を受けるまでに譲受人に対して生じた事由を譲受人に対抗することができます(動産債権譲渡特4(3))。

登記を利用するメリット

債権譲渡登記を利用することによって、多数の債権について一括して担保目的で譲渡したり、質権を設定したりする場合に、個々の債務者ごとに通知または承諾の手続をとることなく、登記という債務者の関与しない簡便な手続で第三者対抗要件を具備することができ、費用も節約することができます。

動産譲渡登記制度は、法人が動産を譲渡した場合に、動産譲渡登記をすることによって、当該譲渡について対抗要件を具備することができる制度です。

動産譲渡登記の対象は、法人がする動産の譲渡であり(動産債権譲渡特3(1))、動産であればいわゆる集合動産であるか個別動産であるかを問わず登記の対象となります。

動産譲渡登記制度が創設される前は、動産を譲渡担保に供して資金調達を図る場合、譲渡人に目的動産の通常の利用を許すためには、占有改定(民183)によって対抗要件を具備するしか方法がありませんでしたが、占有改定は、当事者間の意思表示のみによって行われ、外形的にその存在が判然としていないため、同一の動産について別々の債権者が譲渡担保の設定を受けて紛争になることもあり、動産の譲渡担保の活用を妨げる一因となっていました。

この点、動産譲渡登記を利用して対抗要件を具備することにより、紛争を未然に防止することができ、仮に紛争になった場合にも、対抗要件を具備していることやその時期についての立証が容易になるというメリットがあります。

集合物譲渡担保とは

日常的に搬出・搬入が繰り返される倉庫・店舗内の商品や、工場内の原材料・仕掛品・製品のように、構成部分の変動する集合動産を譲渡担保の目的とすることも可能であり、このような譲渡担保を集合物譲渡担保という。

(参考文献「債権・動産・知財担保利用の実務」新日本法規)

債権・動産譲渡担保 イメージ

債権や動産を金融機関や取引先に担保として譲渡する場合の取扱いは以下のとおりです。

  • 債権の場合は、譲渡人に引続き債権の取立て権限を残します。
  • 動産の場合は、譲渡人に引続き動産の占有・使用権限を残します。

譲渡人が倒産した時などに、初めて譲受人が債権や動産について譲渡担保権を主張して、債権の回収に充てることになります。

債権譲渡担保権のイメージ図

動産譲渡担保権のイメージ図

これまで、動産を担保に入れる際、しばしば所有者が誰なのか紛争が生じることがありました。しかし動産譲渡登記を法務局に申請することにより動産の所有を明確にすることが出来ます。

また、動産自体を特定するのではなく、場所で特定することができるようになりました。

場所の特定とは、「A倉庫の液晶テレビ」のように「液晶テレビ」ではなく「倉庫」を特定する方法です。

「A倉庫にある液晶テレビ」であれば、液晶テレビの種類や、倉庫に入った時期と譲渡担保登記の前後に関わらず、倉庫内の全ての液晶テレビを担保とする事が出来ます。

対象となる動産の種類

特に制限なく、在庫商品(貴金属、食料品、衣料品、電気製品)工作機械、家畜なども担保とする事が出来ます。

具体的な登記申請の方法

動産の譲渡人と譲受人が共同して行います。登記所(東京法務局)に申請します。

必要な書類は、登記申請書、法人の代表者の資格証明書(作成後3ヶ月以内のもの)譲渡人の代表者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)譲受人の住所証明書(法人の場合は代表者の資格証明書)等です。

登録に必要な税金は、1件につき7,500円〜です。(申請を司法書士等に依頼する場合の報酬を除く)

(本契約登記型の集合債権譲渡担保契約書)

平成  年  月  日

東京都中央区銀座四丁目13番7号
株式会社 星野商事 御中

東京都中央区銀座三丁目7番13号
譲渡人 株式会社  銀座物産
代表取締役 銀座太郎

集合債権譲渡担保契約書

譲渡人は、貴社に対して債権を譲渡するにあたり、以下の条項を確約し、貴社に対して本書を差入れます。

第1条(債権の譲渡)

譲渡人は、貴社との間の商品売買・委託加工・委託販売・金銭消費貸借・賃貸借等の諸取引、並びに手形行為・債権譲渡及び債務引受等その他一切の原因により、譲渡人が貴社に対して現在負担し、又は将来負担することのある一切の債務の弁済を担保するため、譲渡人が有する第2条記載の債権(以下「譲渡債権」といいます)を貴社に譲渡します。

第2条(譲渡対象債権)(別紙参照)

譲渡人が貴社に譲渡する債権は、譲渡人が別紙「譲渡債権の表示」欄記載の第三債務者(以下「第三債務者」といいます)に対して現在有し、又は将来有することのある債権であり、その詳細は末尾「譲渡債権の表示」欄に記載の通りとします。

第3条(債権譲渡登記)

  1. 譲渡人は、本書差入れ後直ちに譲渡債権の譲渡について、貴社と協力して動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下「動産債権譲渡特例法」といいます)に基づく債権譲渡登記手続を行います。
  2. 債権譲渡登記の存続期間は本書差入日より満10年間とします。
  3. 債権譲渡登記手続に要する費用は譲渡人の負担とします。

第4条(期限の利益の喪失)

譲渡人において次の各号の一に該当したときは、譲渡人は貴社に対して負担している一切の債務について期限の利益を喪失し、債務全額を直ちに現金で貴社に弁済します。

  1. 債務の弁済を1度でも遅滞したとき。
  2. 手形・小切手を不渡りにする等支払停止又は支払不能の状態に陥ったとき。
  3. 破産手続開始・再生手続開始・更生手続開始・特別清算開始の申立があったとき、任意整理を開始したとき、又は解散決議をなしたとき。
  4. 差押・仮差押・仮処分又は競売の申立があったとき。
  5. 租税公課を滞納して督促を受けたとき、又は保全差押を受けたとき。
  6. 本書その他貴社との約定に違反したとき。
  7. その他前各号に類する譲渡人の信用状態が悪化したと判断される事実があったとき。

第5条(第三債務者への通知)

譲渡人において前条各号の一に該当した場合、貴社は動産債権譲渡特例法第4条2項に基づく第三債務者への通知を行うことができるものとし、譲渡人はこれに協力します。

第6条(譲渡債権の回収・受領)

  1. 第4条に基づき譲渡人が期限の利益を喪失しない限り、譲渡人は第三債務者より譲渡債権の弁済を受領することができます。但し、譲渡人は譲渡債権の弁済期日の前に第三債務者より譲渡債権の弁済を受領する場合は、予め貴社の承諾を得るものとします。
  2. 第4条に基づき譲渡人が期限の利益を喪失したときは、譲渡人は前項に基づく譲渡債権弁済の受領権限を喪失するものとし、以後譲渡債権への弁済は貴社が第三債務者より直接受領し、譲渡人が貴社に対して負担する債務の弁済に充当されても譲渡人は何ら異議を申し述べません。また、貴社が譲渡債権への弁済を受領するに際しては、貴社が、貴社の任意の判断により、適宜和解等による減額、免除等の措置を講じることができるものとし、当該措置によって譲渡人の貴社に対する債務は何ら減免されるものではないことを予め承諾します。

なお、弁済の充当は法定の順序によらず、貴社の任意とします。

第7条(譲渡債権の保証、権利侵害の禁止)

  1. 譲渡人は、譲渡債権につき無効、取消原因、相殺、譲渡禁止特約等による抗弁事由その他一切の瑕疵がないことを保証します。
  2. 譲渡人は、譲渡債権を、第三者に譲渡、移転、担保提供等、貴社の権利を侵害し、又は侵害するおそれのある一切の行為をしません。

第8条(債権証書等の閲覧・交付等)

譲渡人は、貴社より要求があった場合はいつでも、譲渡債権に関する契約書原本、会計記録及びその他貴社が必要とする資料の閲覧・複写・交付に応じるものとします。

第9条(譲渡債権の報告)

譲渡人は、毎月●日現在および貴社より要求があった場合にはその時点における譲渡債権の残高を、当該時点から7日以内に貴社所定の書面により報告するものとします。なお、当該報告には一切の虚偽事項のないことを確約致します。また譲渡債権につき、取引の拡大、縮小、停止等によりその金額が著しく変動し、若しくはそのおそれのある場合、又は別紙「譲渡債権の表示」記載事項に変更があった場合には、直ちに貴社にその旨報告するものとします。

第10条(管轄裁判所)

本契約から生じる権利・義務に関して訴訟を提起するときは、東京地方裁判所を専属の管轄裁判所とすることに合意します。

第11条(その他)

本書に定めのない事項その他本書に関し生じた疑義については、貴社と誠意をもって協議のうえ決定するものとします。

(別紙)譲渡債権の表示(第2条関係)

第三債務者 (住所) 〒100−0000
東京都●●区●●一丁目2番3号
(名称) 株式会社山田商事
譲渡債権 (債権の種類) 売掛債権
(債権の発生原因) 譲渡人と第三債務者間平成○年○月○日付「売買取引基本契約書」に基づく取引により、譲渡人が第三債務者に対して現在または将来有する売掛債権
(債権の発生期間) 平成○年○月○日(始期)から平成○年○月○日(終期)まで
(支払条件) 当月末締め翌月末払 現金

(参考文献「動産・債権譲渡担保マニュアル」商事法務)

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